魂のインターネット

人間とエゴ


第1部の「地球という世界」や「究極のゲーム」で述べたように、本当は霊的存在であり永遠不滅の存在である人間は、いま霊的世界のインターネットで「地球世界ゲーム」というゲームで遊んでいます。そのゲームは、自分が霊的存在であることを忘れるゲームなので、私たちは実際に自分が霊的存在であることを忘れてしまいました。そしていま、そのゲームは後半に入っており、私たちはいったん忘れた霊性を思い出すことに取り組んでいます。

私たちは自分が霊的存在であることを忘れたため、自分は肉体であると思っており、その肉体が意識を持っていると思っています。その肉体の意識の中心がエゴです。最近の心理学では、人間はエゴのほかにセルフあるいはハイヤーセルフと呼ばれるような部分があるといわれるようになってきました。けれども、「セルフ」は「自己」という意味であるにもかかわらず、通常の状態では、私たちは自分がハイヤーセルフであるとは思っていません。それは、私たちがまだ意識の中心をエゴに置いているからです。

私たちはふつう、エゴというのは何か悪いものの代名詞のように考えています。エゴは人間の心の中にある自己中心的な部分で、絶えず自分を守ることばかりを考え、他人を傷つけたり阻害したりしても意に介さない悪徳の権化のようにいわれています。けれどもそれはエゴに対する誤解です。本当はそうではありません。エゴは、肉体人間という仮想世界の中の仮想キャラクターを維持するために絶対に必要なものであり、霊的存在である人間が地球社会ゲームに参加するときに自らの心の中につくり出したものなのです。たとえていえば、エゴというのは、肉体人間という仮想のキャラクターを動かすための自動操縦ソフトのようなものです。

肉体は霊的存在から見れば仮想世界を映すスクリーンの中の単なる「画像」に過ぎないものですが、人間界のパソコンにつくられるキャラクターにくらべれば、はるかにはるかに高度の性能を持ったキャラクターです。それは、物質的には骨格の上に、消化器系、神経系、呼吸器系、循環系、筋肉系、免疫系などの精妙な組織を持ち、ほとんど自動的に自分自身を維持するようにできています。外からの刺激に対してもほとんど反射的にさまざまな行動を取ることができます。自動機械は、決められたとおりの動作を毎回同じように繰り返しますが、人間は3回同じことをさせるともう同じようにはしないといわれるくらい、自動的に学習し習熟して行きます。肉体には自律神経といわれる組織があって、眠っているときでも自動的に肉体の状態を正常に維持するように働きます。肉体には、いわば自動操縦装置が組み込まれているのです。

霊的存在である人間は、このような肉体を使用して仮想社会ゲームに参加するわけですが、この肉体を使用するために心の方にも自動操縦装置をつくりました。それがエゴと呼ばれる心の部分です。エゴの目的は、物質世界において肉体を安全で快適な状態に維持することですから、エゴは物質世界だけが真実に存在するものであると思い込んでおり、絶えず外的刺激に対して肉体である自分を守るように働きます。

問題は、エゴが自動操縦装置として正しく扱われていないことです。飛行機にも自動操縦装置がついていることはよく知られているとおりですが、飛行機の自動操縦装置は操縦士が自分で操縦桿を動かすと即座に自動操縦が解除されるようになっています。つまり、いつでも操縦士の方が自動操縦装置よりも高い優先権を持っていて、操縦士が自ら介入した場合には、飛行機はつねに操縦士の意志に従って動くようになっているのです。もし操縦士が自動操縦装置に任せきりにして適切に介入しなかったために飛行機が事故を起こしたとしたら、それは自動操縦装置が悪いのではなく、操縦士の責任であるはずです。

人間の心の中の自動操縦装置であるエゴも同じです。自動操縦装置であるエゴに対して、必要な場合には「操縦士」が適切に介入しなければならないのです。人間はエゴを超える高次の意識をもっと発達させて、肉体の安全と快適さだけを目的とするエゴの判断に対して適切な介入を行うべきなのですが、現在私たちはエゴ以上の意識の発達が非常に未成熟なのです。けれどもそれは当然の結果です。それは人間が自分の霊性を忘れたために起こったことなのです。地球世界ゲームは、まず霊性を忘れることが中間の目標であり、すっかり忘れたところでUターンして、今度は霊性を思い出すことに取り組むのです。人間は、このゲームの前半の目標を完璧に達成したので霊性を完全に忘れてしまい、その結果、心はエゴと潜在意識だけになりました。エゴは自動操縦装置であり、潜在意識は「これは自分の意識ではない」といって責任を放棄した部分です。つまり、人間はエゴだけで動く純粋の物質状態になってしまったのです。エゴは潜在意識の中に蓄積されている膨大なデータを活用しますが、その目的は常に肉体の自分あるいは自分が属する集団の利益を図るためです。

エゴの半分は顕在的に、半分は無意識的に動きます。私たちは自分で意識してしっかり考えて判断していると思っていても、たいていはこのエゴに動かされているのです。

いま私たちは霊性を回復する帰還の途上にありますが、それはエゴを超える高次の意識を発達させて、エゴの自動操縦装置的な動きに対し適切な介入ができるようになって行くことです。このため、人間は宗教的な言葉でいえば霊性、心理学的な言葉でいえばハイヤーセルフというようなものに関心を持つようになってきているのです。最終的には、私たちの意識の中心をエゴから高次の意識の方へ移さなければなりません

エゴの存在目的は肉体を維持することですから、意識の中心が肉体から霊的世界の方へ移ることに対して、エゴは恐怖を覚え、何とかして阻止しようという反応を起こします。エゴは、人間が霊性を回復したら、自分は存在しなくなると思うのです。もしあなたの心の中に、霊的世界とか霊性とかいうのは嘘だ、という声があるとしたら、それはエゴの恐怖の叫びなのです。ここでエゴと喧嘩するのは得策ではありません。エゴも自分の心の一部なのです。自分の心の一部に自分と対立する部分を抱えていては、霊性を回復することはできません。私たちは、潜在意識を意識化して自分の心の一部として統合して行かなければなりませんが、同じように、エゴも自分の心の重要な一部として統合していかなければなりません。最終的には意識のすべての部分を統合し、一つの完全な意識になって行くのです。そのためには、エゴに対して、霊性を回復してもエゴがなくなるわけではなく、より高い自己になって行くのだということを納得させる必要があります。

新しい世界像を用いて、今まで肉体だけが自分だと思っていたけれども、自分は本当はそれよりはるかに強力な高次の存在なのだということを、繰り返し自分の意識の中に浸透させてください。やがてエゴは、肉体を維持することだけでなく、それよりももっと高いレベルの存在である霊的存在としての姿を物質世界に反映させることが自分の目標であると考えるようになり、霊性回復への強力な協力者になるでしょう。
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