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科学


いままで科学と宗教は同一の領域に対する解釈を競い合っていたように見えます。けれども本当は、宗教は霊的世界を扱うものであり、科学は仮想世界である物質宇宙のしくみを解明するものです。いままで、この両者を統一的に表現することのできる世界像がなかったので、混乱していたのです。

科学というのは、「宇宙の意識」が提供している物質世界の法則を物質世界の現象的現れから逆に推定していこうとするもので、物質世界で体験できる素晴らしいゲームのひとつです。それは一種のクイズです。物理法則を提供している宇宙の意識との知恵比べです。宇宙の意識がどれほどの知性を持っているかということは、近年、物理学が発見したスーパーストリング(超弦)理論を見れば明らかです。宇宙は非常に美しい芸術品のような数学に支えられて展開しています。宇宙の最終理論といわれる大統一理論を研究している物理学者たちは、いままで数学者たちも知らなかったような新しい数学を発見し続けているのです。

もし物質宇宙が仮想世界であるなら、宇宙の意識はそのような法則など無視して勝手気ままな宇宙をつくってもよかったのではないでしょうか。そうではありません。仮想世界の物語のようなものを考えてみたことのある人ならすぐに理解できるでしょうが、このような世界をつくるとき、いいかげんな考えでつくっていけばすぐに辻褄が合わなくなって破綻してしまいます。子供のための冒険物語でさえも基本的な地図があって、世界の東の方には何があり、南には何があるというような土台がつくられ、その上で物語が展開されていくのです。そうでないと物語がすぐに混乱してしまいます。

まして物質宇宙の中には、太陽系の外側に想像を絶する空間があり、そこには無数の星がきらめいています。そこには、地球以外にも異なるドラマの舞台が数多く用意されているのです。そこでは数限りない多種多様な体験が生み出されていきます。地球だけに限っても、その中で60億の人間がさまざまな動物や植物とともに暮らし、山や川や海の自然環境の中から、いろいろな手段で新しい物質をつくり出して、自分たちの環境を豊かに変化させていきます。物質宇宙の物理学はそのような多彩な変化に耐え得るような土台を提供しているのです。もし物質宇宙が強固な数学的構造を持っていなかったら、地球やその他の星の世界が、数多くの霊的存在が自分の分身を送り込んでありとあらゆる体験ドラマをつくり出すための、豊かな土台として機能することはできなかったでしょう。

宇宙の法則は非常に簡単なものから驚くべき多様性を生み出すようにつくられています。人間の身体は5万種類のたんぱく質でできているといわれますが、そのたんぱく質は25種類のアミノ酸の組み合わせでつくられており、25種類のアミノ酸はたった4種類の塩基の組み合わせでつくられているのです。つまり人間の身体は、筋肉や神経から骨や歯にいたるまで、わずか4種類の塩基の組み合わせでつくり出されているのです。
 
間が知っている化学物質の数は数百万種類あります。けれども、それらはすべて百種類に満たない原子の組み合わせでつくられます。
 多くの物質は温度が下がるにつれて体積が減少しますが、水は摂氏4度で体積が最も小さくなるようになっています。そのため、氷が水に浮くようになるのです。もしも氷が水より重かったら海は底の方から凍ってしまい、現在のように平均水深4000メートルというような液体の海が存在することは不可能です。なぜなら、氷が水より重かったら、冬のあいだにできた氷は次々に海の底に沈んでいき、次に春がきてもとけません。春になっても暖かくなるのは海面だけで、海の底に沈んだ氷をとかすほどの熱は海底には伝わっていかないからです。海は次第に底の方から凍ってしまい、液体の水は表面のごくわずかな部分だけにしか存在しなくなるでしょう。しかもそれは氷の上にほんの少しだけとけて存在するのですから、ほとんど摂氏0度の冷たい水です。こんな環境では、現在の地球に存在するような多種多様な生物の存在は不可能です。

科学者たちは「宇宙の意識」のことを知らないので、このような物理法則の存在を偶然の奇跡と考えていますが、実際には物質宇宙というのは、その中に多種多様な生命体を育み、多種多様な生命の体験を生み出すための場としてつくられているのです。物理学者の中にも、宇宙の物理法則が、人間のような知的生命を発達させるのにちょうどよく設定されていると考える人たちもいます(アーナ・A・ウィーラー、野中浩一訳、惑星意識、日本教文社、p288)。

物理学者たちは、宇宙の最終理論が発見されるのも、そう遠くないのではないかと考えはじめているようです。もし本当にそうであれば素晴らしいことですが、物質宇宙の中に働いている法則の目に見えるかたちだけではなく、その背後にある霊的世界の存在たちのことまで理解されるようになると、もっと素晴らしいと思います。
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