霊性入門講座

C15 共同幻想


人間は物質でできた肉体ではなく、霊的な存在であるという話をしてきました。物質世界も肉体も、霊たちが想像した仮想の世界だという話をしました。

けれども、それならどうして、私たちは自分が霊であることを覚えていないのでしょうか。どうして、私たちは大勢で同じ世界の中に住むことができるのでしょうか。私の住む世界が私の想像であり、あなたの住む世界があなたの想像であるなら、どうしてそれが同じ世界であり得るのでしょうか。今回はそのことをお話しようと思います。
 
一番簡単なたとえは、物質世界は映画である、というものです。
霊たちが住む世界を霊界と呼びましょう。霊界というとすぐに死後の世界と思われる方があるかも知れません。何か暗い陰鬱なイメージをもつ人もあるかも知れません。けれども、今は、そのような連想をすべて捨ててください。ただ、永遠に生きる霊たちの住む愛と光に満ちた輝かしい世界、むしろ、天国か極楽をイメージしてください。

その霊界に映画館ができました。霊たちは映画を見に行きます。霊たちは非常に感受性が強いので、映画をみているあいだ、映画の主人公に感情移入して、自分がその主人公になったつもりになります。そして、映画の物語の進行と共に、喜んだり、悲しんだり、恐れたり、得意になったりするのです。
 
昔、私の子どもが幼稚園に行っていた頃のことです。幼稚園で演芸会がありました。「白雪姫」の物語が舞台で演じられます。見ている子どもたちは、すっかり舞台に心を奪われています。いよいよ物売りのおばあさんに化けた悪い女王が、白雪姫に毒を塗ったリンゴを食べさせる場面になったときのことです。
突然観客席のほうから叫び声が上がりました。
 「たべちゃあ、だめーっ」
けれども、白雪姫はリンゴを食べて倒れてしまいます。
 「ほらあ、言ったじゃなーい!」
まわりに立っていたお母さんたちは笑いを抑えるのに必死でしたが、子どもたちは真剣だったのです。心の底から白雪姫の世界にはまり込んでいたのでした。
 
いま、人間はこの子どもたちのような状態になっています。霊界の映画の中の「架空の物語」に夢中になって、自分が何であるかを忘れているのです。

霊界の映画は人間界の映画より少し上等で手が込んでいます。それは観客自身を巻き込んでしまう映画、物語を観客自身が作っていく映画なのです。そこで、もうひとつ別のたとえをお話しましょう。

シミュレーター(擬似体験装置)という言葉をご存知の方は、それを思い浮かべてください。現在、私たちの世界では、いろいろなところで、シミュレーターが使われています。一番良く知られているのは、飛行機の操縦士を訓練するためのシミュレーターです。
 
飛行機の操縦士は、複雑な操縦装置の操作の仕方を覚えないといけませんが、実際に飛行機に乗って空を飛びながら訓練したら、操作に失敗した時には墜落して命に関わります。そこで、地上においた装置の中に入って、そこで本当に空を飛んでいるかのような疑似体験をしながら訓練を受けるのです。

自動車は墜落することがありませんから、運転を間違ったとしても、横に乗っている教官がブレーキを踏んで車を止めさえすれば安全です。それで、自動車では、実際の車を運転しながら訓練をしていました。けれども、最近では、自動車の教習所でも、シミュレーターが使われるようになっています。
 
さて、霊界のテーマパークに人間シミュレーターというものができたと考えてください。そこへ遊びにいった霊たちは一人ずつ箱のようなものに入ります。その箱が一人の人間を表しているのです。

箱に入ると目の前にスクリーンがあります。そこには、その箱に対応している人間の目で見た地球世界の姿が映し出されています。スクリーンの下には「人間を操縦するための装置」があります。「歩く」というボタンを押せば、スクリーンの中の光景が次第に近づいてきて自分の横を過ぎ去ります。「右を向く」と指示すれば、スクリーンの中の光景が左に流れていき、右側の風景が見えるようになります。

「外の世界」は見えるだけではありません。音も聞こえ、匂いもします。それだけではありません。触覚や痛覚や温度の感覚も感じられるようになっています。「手を伸ばせ」と指示を出せば、スクリーンの中で自分の手が伸びていくのがわかります。そして、それが何かに触ったときには、それがスクリーンの中で見えるだけでなく、触覚に「何かに触ったぞ」という信号が入ってきます。

「自分はどんな姿をしているのだろう」と思えば、鏡の前に歩いていけばいいのです。鏡に映る姿を見て、「なるほど、自分はこんな形をしているのか」ということがわかります。向こうから同じ形をしたものが近づいてきます。「あれは仲間だな」ということがわかります。それは、ほかの箱が表している人間の姿なのです。

誰かが仮想世界の中で家を建てたとすると、その情報はほかの箱にも伝えられるます。それで、すべての「人間」がその家ができたたことを知ることができます。・・・・
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このようにして、箱の中に入った霊たちは、ほかの箱に入った霊たちのすることの情報を全部もらうので、スクリーンの中には、大勢の霊たちが共同で作り上げた世界の姿が見えることになります。

これが霊たちで作り出す共同幻想の世界なのです。
 
「シミュレーター」というのはひとつのたとえです。霊界には、箱も操縦装置もありません。なぜなら、霊というのは純粋の意識だからです。物質的な道具は何もありませんが、霊たちはこれと同じことを純粋に意識の中だけで実現しています。そして、地球世界、大きく言えば、この「宇宙」という広大な世界の幻想を作り上げて、その中で生活するという体験をしているのです。
 
いったい、霊たちは何のためにこんな遊びを始めたのでしょうか。次回はその話をすることにしましょう。

2004年12月1日

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