霊性入門講座

C29 情報の海で


現代は、情報があふれている時代です。霊性についても、いろいろな人や本やインターネットのサイトで、いろいろな情報を手に入れることができます。その中には、互いに矛盾する情報がたくさんあります。もし、耳や目に入ってきた情報を全部信じていたら、それをどう理解していいのかわからなくなり、パニックになってしまいます。

今回は、ある人から届いたメールに対する私の回答をもとにして、あふれる情報にどう対応したらいいのか、ということをお話します。

 
先日、ある人(仮にTさんとしておきましょう)から、次のような趣旨のメールが届きました。
 
Tさんは、身体の不調を治療してもらうために、霊的なエネルギーを扱う、ある治療師を訪ねました。Tさんが、その治療師を訪ねたのは初めてでだったのですが、治療師は治療を始めるとまもなく、こう言いました。
 「あなたは、顔の右半分のオーラがぐちゃぐちゃになっていて、それについての強い恐怖がいまも残っている。それは数百年ぐらい前の前世から未解決のまま持ってきているもので、それを解決しないとこの不調は治らない」
Tさんが「その課題は何ですか」と聞くと、治療師は「それは自分で発見しなければならない」と言いました。そのほかにも、いろいろなことを言われて、Tさんはすっかり不安になってしまいました。
 
Tさんは、私の本やホームページを読んでいらっしゃる方ですが、オーラとか前世とか、そういうことをあまり知りませんでした。「前世がある」というよりも、「すべての可能性がいま現在、同時に存在していて、その中で自分がフォーカスしたものを体験するのだ」という風に理解しておられました。Tさんは、治療師が自分の知らなかったことをいろいろ言うのを聞いて、怖くなってしまいました。「まるで、お金を払って脅されに行ったような感じがします」とおっしゃいます。それで、私のところに、「どう考えたらいいのでしょうか」と尋ねてこられたのです。
 
それに対して、私は次のような返事を送りました。

* * * * * * *

Tさん、すこしゆっくりお話をしましょう。次の三つの話題に的を絞ってお話しします。
   1. 正しい話はどれか
   2. 前世について
   3. オーラについて
 
1.正しい話はどれか
 
今回、Tさんは治療師の言葉によってゆさぶられ、狼狽しましたね。
なぜ、あなたは狼狽したのでしょうか。
治療師があなたの信じていたことと違うことを言ったからでしょうか?
そうではありませんね。あなたは、あなたが信じていることに自信がなかったから、狼狽したのです。
 
Tさんは、「いろいろな情報の中には、正しいものと間違ったものがある」と考えておられますね。そして、霊性の道を進んでゆくためには、霊性に関する「正しい情報」が必要だと、思っておられますね。 それで、あなたは治療師が自分の信じていることと違うことを言うと、どっちが正しいのだろうと不安になるのです。
 
けれども、実は、「それ自体で正しい情報」とか「それ自体で間違っている情報」というのはないのです。「あなたにとって正しい情報」と「あなたにとって間違った情報」があるだけなのです。
 
たとえば、大勢の人が一つの山に登ろうとしていると考えてください。みんな出発する場所が違いますから、みんな違う道を登ります。すると、「西に向かいなさい」という情報は、東のほうから登る人に対しては正しい情報ですが、西のほうから登る人に対しては間違った情報になりますね。
 
霊性についての情報も、これと同じです。人が霊性を取り戻してゆく道は、一人ひとり皆違います。誰一人同じ道は通りません。したがって、一人ひとりが必要とする情報もみな違うのです。
 
では、自分にとって正しい情報をどうやって見分けたらいいのでしょうか。
Tさんは、私が書くものに出会ったとき、「解放された思いに満たされて喜びに包まれた」とおっしゃいましたね。これが、自分にとって正しい情報を選ぶキイなのです。治療師の人が何を言ったとしても、それを聞いてTさんが「魂の震えるような喜び」を感じるなら、それを受け入れてください。もし、「これはちょっと違うなあ」と感じるなら、その情報は無視してください。それは、治療師が間違っているという意味ではありません。ただ、その情報が、Tさんにとっては不必要なものだということなのです。
 
あなたの人生の主人はあなたです。あなたの道はあなたが決めます。その権利を誰にも譲り渡してはなりません。どんな情報も――治療師や私が言うことはもちろんのこと、たとえそれが釈迦やキリストの言葉であったとしても――あなた自身の深いところで、これは正しい、これは素晴らしい、と感じるものだけを選んでください。時には、いま捨てたものをあとで拾うということも起こります。それは、あなたが成長するにつれて、あなたが必要とするものも変わってゆくからです。そのように考えて、自由な心で、いま受け入れようと思うものだけを受け入れて進んでください。そうすれば、誰が何を言っても、怖れることはありません。
 
2.前世について
 
治療師は前世の話をしました。Tさんは「すべては今同時に存在している」と考えています。どちらが正しいのでしょうか。
 
こんなたとえを考えてみてください。音楽CDにたくさんの曲が入っています。すべての曲が、いま現在、同時に存在しています。曲の始めも終わりも同時に存在しています。「私たちのすべての人生が同時に存在している」というのは、このCDのようなものです。一つ一つの曲が一つの人生です。いま、一つの曲を演奏します。すると、曲は先頭から始まり、時間がたつにつれて進行し、最後の和音とともに終わります。これは、私たちの人生が、誕生から始まって死によって終わるのと同じです。「存在」においては同時ですが、「経験」においては時間が流れます。それは、時間そのものが「経験」だからです。
 
このCDをはじめから順番に演奏する人にとっては、すべての人生が時間の順に並んでいるように感じられます。それで、一つの人生の前に前世があり、その前にはさらに前々世があるという風に感じます。このCDをランダムに演奏する人は、どれが前世かわからない、と思います。曲を自分で選んで聞く人は、自分がフォーカスした人生を体験するのだ、と思います。
 
このように見てみると、実は、治療師が言ったこととTさんの考えの間には、それほど大きな違いはない、ということがわかるのではないでしょうか。人はそれぞれ、自分に適した言葉で表現します。治療師の人は前世という言葉がぴったりだと感じているのでしょうし、Tさんは「フォーカスする」という言い方のほうが適している、と思われるのですね。
 
Tさんは、ご自分の好きな言葉でものごとを理解し、それにしたがって自分の道を決めてください。けれども、ほかの人が、その人の好きな言葉で表現することも認めてあげてください。人は、一人ひとり、みんな違う道を歩いているのですから。

3.オーラについて
 
私は「人間には身体はない」と言います。人間は純粋の意識であって、肉体も物質世界もその意識が描いた仮想現実だからです。けれども、仮想現実の世界で遊ぶためには、仮想現実の世界にもさまざまなルールが必要です。そのルールの一つが、人間は肉体であり、肉体は物質である、というものでした。けれども、最近は、人間はエネルギーであるという考えが、次第に広まりつつあります。人間がエネルギーであるというのは、肉体であるというよりも、もっと高次のルールであり、自由度の高いルールです。
 
たとえば、パソコンのOSのWindows XP には、home edition と professional edition がありますね。初心者は home editionを使いますが、難しいけれどももっと自由度の高い仕事をしたいという人は professional editionを使います。人間を肉体と見るのは、いわば、物質世界の home edition であり、エネルギーと見るのは professional editionである、と言えるでしょう。
 
人間をエネルギーとしてみる見方に習熟した人の中には、オーラやアストラル・ボディなどを見ることのできる人もいます。そういう能力を持った人が信頼できる人であるなら、そういう人に見てもらうのは役にたちます。けれども、オーラの見える人がすべて信頼できる人であるとは限りません。たとえ悪意はないとしても、その人の歩む道があなたの道と大きく違っていると、そのひとからはあまり大きな助けは得られないかもしれません。
 
すべてにおいて、「あなた自身の魂が選ぶ」道を進んでください。あなたにとってオーラを直接に扱う必要が本当にあるなら、あなたの魂は必ずそのことがなされるようにあなたを導いてくれます。オーラの具体的なことがわからなくても、身体全体に、心全体に、光を入れる瞑想をすることはできます。そして、心を浄化することに取り組んでください。心が浄化されれば、自然にオーラはきれいになります。心を浄化することについては、ここで取り上げるにはテーマが大きすぎますので、私のホームページを見てください。これからも、いろいろ書いていくつもりです。
 
最後に、「なんだか、お金を払って、脅されに行った様な気持ちになりました」とおっしゃることについて、ひとこと付け加えておきます。 

確かに、あなたはお金を払って脅されに行きましたね。それは間違いない事実です。では、その治療師は「悪い」ひとでしょうか。実は、あなたをそのような人のところにつれていったのは、あなたの魂なのです。ハイアーセルフと言ってもかまいません。あなたは、その治療師に脅され、狼狽して、自分は何を学んでいたのだろうと振り返りました。あなたにとって、実は、それが必要なことだったのです。その治療師の治療自体は効かなかったかもしれませんが、あなたが自分を見つめなおしたこと・・・それが、その治療師の治療効果ではないでしょうか。
 
ハイアーセルフは、私たちを目覚めさせるために、ときどきこういう手を使います。それは、ハイアーセルフが意地悪だからではありません。私たちが鈍感だからなのです。ハイアーセルフは、私たちを目覚めさせるには、時には脅しが必要なことを知っているのです。
 
私も、これまで何度もハイアーセルフに脅されたことがあります。けれども、もし私たちが普段からもっと真剣に霊性に取り組んでいたら、ハイアーセルフに脅されることはないでしょう。私たちは、霊性について、よい本を読んで気持ちよくなると、「ああ、よかった」と言って休んでしまう傾向があります。けれども、それでは、霊性への道を一歩も進んだことにはなりません。実際に、心の浄化に取り組み、霊性に対する感覚や感性を研ぎ澄まし、愛と祝福を周りのすべてに送ってあげるように努力してください。そうすれば、あなたの歩む道は日に日に平坦な優しく美しい道に変わっていくでしょう。

* * * * * * *

以上が、私の返事です。
情報はあふれています。けれども、もし、あなたがすべての情報を信じるのなら、情報はないほうがましです。霊性の道を歩む人は、あふれかえる情報の中から、自分に必要なものを選ぶ力を身につけなければなりません。そのためには、自分のハイアーセルフの導きを信頼してください。心の中の最も深いところの感覚を感じ取る練習をしてください。最終的に信頼できるガイドは、あなた自身のハイアーセルフしかないのです。

誰か他人が、あなたにとって正しい情報を与えてくれることはありえません。なぜなら、他人は誰もあなたがどの道を歩くのか知らないからです。

他人が与えるのは一般論です。私が皆さんにお話しするのも一般論です。できるだけ、誰にでも通用するお話をします。それは、たとえて言えば、地図の読み方を教えるようなものです。地図の読み方は、私が教えることができます。けれども、あなたが見なければならない地図を持っているのは、私ではありません。ほかの誰もあなたの地図を持ってはいません。それを持っているのは、あなたのハイアーセルフだけなのです。

あふれかえる情報の海でおぼれないために、ハイアーセルフのメッセージを聞くことを覚えてください。

2006年2月1日

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