霊性入門講座

C31 愛を取り戻す


これまで、「風の講座」では、人間が霊的存在であるとはどういうことかということを、また「水の講座」では、人間を物質世界に縛り付けている心の中のゴミを掃除することについて、お話ししてきました。この「火の講座」では、心のゴミを掃除したあとに何を入れるべきか、ということについてお話します。
 
聖書の中に、キリストが語ったという、こんなたとえ話が書かれています。
「けがれた霊は、人から出て行くと、砂漠をうろつき、休む場所を探すが見つからない。それで、『出て来たわが家に戻ろう』と言う。戻ってみると、空き家になっており、掃除をして、整えられていた。そこで、出かけて行き、自分よりも悪いほかの七つの霊を一緒に連れて来て、中に入り込んで、住み着く。そうなると、その人の後の状態は前よりも悪くなる。」(日本聖書協会 新約聖書 マタイによる福音書12章43−45節)
 
心の中のゴミを掃除すると、今までゴミがあったところが空洞になります。それを空っぽのままにしておけば、いずれまたゴミがたまります。元に戻るぐらいですめばいいのですが、以前よりももっとひどい状態になってしまうかもしれません。ゴミをためないためには、心の中の空洞を、ゴミが入る余地のないように、充実させなければならないのです。
 
では、一体、心の中に何を入れたらいいのでしょうか。
 
それは、ひとことで言えば、「愛」です。心の中のゴミを捨てたあとには「愛」をつめ込んでください。どうしたら、心に「愛」をつめこむことができるかは、このあとの講話でお話していきますが、とにかく、私たちがしなければならないことは、心の中に「愛」を満たしていくことである、ということを覚えてください。
 
「愛」を、ふつう私たちは、「愛する」という動詞として考えています。「愛」とは何かをすることであると考えています。人を好きになったり、人に優しくしたり、親切にしてあげたりするのが「愛」だと思っています。けれども、もし「愛」をこのような「何かをする」ことだと考えていたら、心の中に「愛」をつめこむということは理解できないでしょう。
 
実は、「愛」というのは一種のエネルギーなのです。それは、物理学で言うエネルギーよりも、もっともっと根源的なエネルギーで、あらゆる存在を支え、宇宙の秩序を整えるエネルギーなのです。「愛」というのは、あらゆるものに「存在性」を与えるエネルギーであり、あらゆるものに「生命」を与えるエネルギーであり、あらゆるものに「意味」を与えるエネルギーなのです。
 
物体に熱エネルギーを与えてやると温度が上がっていくように、心に愛エネルギーを与えてやると、心の温度が上がります。そうすると、その人のすることや語る言葉が違ってきます。世の中の出来事や、他人のすることに対して、普通の人のような反応をしなくなります。私たちは「心の暖かい人」とか「心の冷たい人」という表現を使いますが、それは決して偶然にできた表現ではありません。心の暖かい人というのは、本当に心の温度が高い人なのです。心の中にたくさんの愛エネルギーを持っている人なのです。
 
もっともっと、愛のエネルギーをつめ込むと、心だけでなく、身体も光に変わります。ほかの人が見ても、その人の身体から何か目に見えない光のような、まぶしいものが出ているのが感じられるようになるでしょう。身体は、病気になることも死ぬこともなくなり、行きたいところに瞬時に現れ、同時にいくつもの場所に存在することもできるようになります。要するに、物質世界のあらゆる法則を超越してしまうのです。このような存在を霊的な存在と言います。心の温度を高めていけば、私たちは自然に霊的な存在に還ってゆくのです。
 
私たち人間は、もともとは非常に心の温度が高い存在でした。「愛の化身」でした。けれども、今は非常に心の温度が低い状態になっています。なぜ、そうなったかということは、ほかのページでいろいろお話していますが、一言で言えば、心の温度を下げたら何が起こるかということを実演し、また体験するための実験だったのです。
 
実験は大成功です。私たちは、愛のエネルギーを極端に減らして、心の温度を極限まで下げることに成功し、そのときに何が起こるかをあますところなく体験し、宇宙全体に見せてきました。
 
けれども、もう実験の時間は終わりました。これからは、私たちは、始めのように「愛の化身」に戻って行くのです。そのためには、心に愛のエネルギーを流し込んで、心の温度を上げなければなりません。それが霊性を取り戻すということなのです。

2006年4月1日

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