霊性入門講座

C33 呪いと祝福


皆さんは「呪う」という言葉をご存知ですね。相手――それが人間であろうと、団体であろうと、出来事であろうとー―その価値を否定し、その存在を拒否し、相手が不幸になるように願い、この世から排除してしまいたいと願う・・・そういう気持ちを感情をこめて表明したものが「呪い」です。
 
実は、私たちは、ふだん何気なく、呪いの言葉を吐き続けています。「そんなことはしていない」と思う人もあるかも知れません。けれども、私たちは、人のすることや世の中の出来事を見て、非難したり、憤慨したり、軽蔑したりすることがあるのではないでしょうか。それはすべて程度の軽い呪いなのです。たとえ「相手が悪い」ということが明白である場合でも、非難することは呪いなのです。
 
いま、私たちの世界は、毎日毎日、悲惨なニュースを聞かない日はありません。戦争、テロ、難民、汚職、犯罪、伝染病、公害、気象異変、地震、食糧危機・・・人間の世界も自然界も、悲惨な出来事で満ちあふれています。私たちは、そのような出来事を知るたびに、心の中で――時にはあからさまに口に出して――世界を非難し、人間を非難します。
 
また、私たちの周りにはいろいろな人がいます。その人たちの生き方や、することや、話すことが、いつも自分の気に入るとは限りません。自分の気に入る生き方をしない人に対して、私たちは非難の目を向けます。あからさまに口に出してとがめることもありますが、そうでないときでも、心の中で非難したり軽蔑したりします。
 
いまの世界の姿を見ていたら、遠くの世界も近くの世界もめちゃくちゃです。呪いの言葉を吐きたくなるのも無理はありません。ですから、私は、あなたがいま「呪いの言葉」を吐き続けていたとしても、それを悪いというつもりはありません。悪いと思うかどうかは、あなたが自分で決めればいいことです。ただ、それを正しく判断するためには、呪いの言葉が何をもたらすかという因果関係を理解しなければなりません。それを理解した上で、あなたはどうするか、それはあなたが自分で決めてください。
 
呪いの言葉は、一種のエネルギーの波動を世界に向けて送り出します。それはマイナスのエネルギーです。マイナスのエネルギーを貰った人は、自分の持っているエネルギーが減少するのを感じることになります。それは簡単な算数の問題です。10のエネルギーをもっているひとにマイナス2のエネルギーを与えると、その人のエネルギーは8に減ってしまいます。
 
たとえ、私たちの吐く呪いの言葉が決して相手には聞こえなかったとしても、それは確実に相手のエネルギーを奪い、心の温度を下げ、ついには凍らせてしまいます。なぜなら、霊性の世界には、空間も距離も存在しないからです。私たちが吐き出す呪いの波動は、絶対確実に相手に届きます。それだけではありません。それは、全宇宙のすべての存在に届くのです。私たちは、一人の人だけを狙って呪いの言葉を口にします。ところが、その呪いは、全世界、全宇宙に届いてしまうのです。私たちは、A18 ナルニア国物語の魔女が自分の気に入らない生き物たちを凍らせて石にしてしまったように、自分の吐く呪いの言葉によって全世界を凍らせているのです。
 
私たちは、世界が悪いから非難するのは当然だと思っています。けれども、世界が凍っているのは、私たち自身が送り出している呪いのエネルギーの波動によるのです。私たちがそのことに気付くまでは、この凍りついた地球世界に春をもたらすことはできないでしょう。
 
それでは、凍った世界に春をもたらすものは何でしょうか。それは「祝福」です。呪いの反対は「祝福」です。愛を言葉にしたものが「祝福」です。相手の存在価値を認め、相手の存在を賞賛し、相手に幸せがあるように、その存在がますます輝くようにと願う気持ちを感情をこめて表現したものが「祝福」です。
 
けれども、私たちはふだん「祝福」という言葉はあまり使いませんね。私たちは、「祝福」なんて、カトリックの神父さんがすることぐらいにしか思っていないのではないでしょうか。けれども、そうではありません。愛というのは「祝福すること」なのです。
 
私の家に猫が二匹います。私は時々猫をひざの上に抱いて、こう言います。「お前はいい猫だねえ」、「かしこい猫だねえ」、「利口な猫だねえ」、「可愛い猫だねえ」・・・猫が相手なら、何とでもいえます。猫はただ喉をごろごろ鳴らしているだけです。一匹の猫は、私がパソコンに向かっていると、机の上に飛び上がって、私とパソコンの間に座ります。私は「いい猫だねえ」と言いながら抱き上げて床に下ろします。どうしても仕事の邪魔になって仕方がない時は、別の部屋に閉じ込めます。「いい猫だねえ」といいながら・・・。
 
これが祝福です。「いい猫だねえ」というのは、猫を祝福しているのです。猫が何かをしたから「いい猫」なのではありません。何をしても、何もしなくても、無条件に「いい猫」なのです。私は絶えず猫を祝福しています。そして、猫を祝福すれば、そのときに出るプラスのエネルギーが全世界に届きます。猫を祝福することは世界を祝福することなのです。
 
けれども、もし私が猫だけを祝福して、そのほかのものはみんな呪っているとしたら、どうなるでしょうか。猫を祝福する時間より、ほかのものを呪う時間のほうが圧倒的に多いことになります。そうしたら、差し引き計算して、私は常に世界を呪っていることになります。その結果、私は凍りついた世界を体験することになります。
 
あなたが体験する世界は、あなた自身が過去に宇宙に向けて送り出したエネルギーの総和なのです。ここで過去というのは、単に現在の人生に生まれてからの話ではありません。前世や前々世など、何十回、何百回にもなる過去世においてあなたが送り出したすべてのエネルギーの総和を、あなたはいま受け取っているのです。もし、その総和がマイナスになっていたら、あなたはマイナスエネルギーの世界を体験します。それはさまざまな悲惨な出来事に溢れ、絶えず不都合なできごとが起こる世界です。一生懸命プラスのエネルギーを送るように努力しても、なかなか効果が現れないように感じて、絶望してしまいます。それは、あなたが今送り出すプラスのエネルギーは、過去のマイナスエネルギーを打ち消すために使われてしまうからです。
 
けれども、根気よくプラスのエネルギーを送り続けてください。やがて、あなたのエネルギーの総和がプラスになるときが来ます。そうしたら、あなたは不思議な世界を体験することになります。世界全体を見ると、いまだにたくさんの悲惨な姿が見られますが、あなたの周囲だけはなぜか都合のいいことばかり起こるようになります。それはまるで、ブリザードの吹き荒れる南極に、温泉の湧き出るオアシスがあるようなものです。そのオアシスの周囲だけは、暖かくて、氷は融け、緑の草木が生い茂ります。美しい花が咲き、蜂や蝶が飛び回ります。けれども、そのオアシスから遠く離れたところは、肌を刺すような雪嵐が吹きすさぶ氷の世界のままです。
 
猫であれ、犬であれ、ペットを祝福するのは簡単です。そして、ありがたいことに、ペットを祝福することは世界を祝福することなのです。ペットの存在目的は、そこにあるのかも知れませんね。ペットたちは、私たちに、世界を祝福するチャンスをつくってくれているのです。ペットを飼っている人は、まず、あなたのペットを祝福するところから始めてください。
 
けれども、それだけでは足りません。その次には、ペットだけでなく、ありとあらゆるものを祝福してください。朝から晩まで絶え間なく「あなたはいいひとねえ」「地球世界は素晴らしい世界だねえ」と言い続けてください。ただし、これを口に出すと、たぶん、気が狂ったのかと思われるかも知れませんから、心の中で、人に知られないように続けてください。もし、本当に心を許すことのできる人がいたら、その人に、こうして世界を祝福する方法を教えてあげてください。
 
世界を祝福するということは、目の前にある何かの不都合を我慢して耐え忍ぶということではありません。私が「いい猫だねえ」と言いながら、仕事の邪魔になる猫を別の部屋に閉じ込めるように、不都合を避けるためにできることは何でもしてください。けれども、そのときにも、不都合を呪うのではなく、心の中では「素晴らしい世界だねえ」と言い続けてください。
 
目に見える姿のよしあしとは無関係に、絶えず世界を祝福し、絶えず人を祝福し、絶えず自分を祝福してください。祝福すること――それが「愛」なのです。やがて、いつの日か、あなたが送り出したエネルギーの総和がプラスに転じるときが来ます。そうすれば、あなたは奇跡の世界に住むことになるでしょう。

2006年6月1日

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