未来へのビジョン

 
L22 交通機関のない世界(H14)


皆さんは、「カモメのジョナサン」という物語を知っていますか? リチャード・バックという人が40年ほど前に書いた物語です。




カモメのジョナサンは、飛ぶことに夢中になっていました。どうしたら、もっと速く飛べるかということばかり考えていました。ほかのカモメたちが餌を求めて、漁船の周りでギャアギャア騒いでいるときも、ジョナサンひとり離れたところで、飛ぶ練習に専念していました。

ある時は、高く高く昇ってから翼をたたみ、まっさかさまに急降下します。そして海面すれすれのところで、急旋回して舞い上がってくるのです。友達のカモメが「そんなことをしていたら、今に、海面に突っ込んで死んでしまうぞ」と忠告してくれましたが、ジョナサンは耳を貸そうとしません。しまいには、友達も呆れて、離れて行ってしまいました。それでも、ジョナサンは、ひとり離れたところで、黙々と、速く飛ぶ練習を続けていました。

ある日、ジョナサンのそばに不思議なカモメが現れます。そのカモメは全身が金色に光り輝いていました。光るカモメはジョナサンに言います。「君に、本当の飛び方を教えてあげよう。見ててごらん」。

光るカモメは、静かに海岸の岩の上に立ちました。そして、ジョナサンがじっと見つめていると、突然その姿が消えます。きょろきょろと周りを見回すジョナサンの耳に、はるかかなたの岩の上から、光るカモメの声が聞こえてきます。「お〜い、ここだよう〜」。光るカモメは一瞬で、数百メートル先の岩に移動してしまったのです。

ジョナサンは、その日から、光るカモメについて、テレポーテーションの練習を始めます。そして、ある日ついに、ジョナサンはテレポートすることに成功します・・・




物語は、この後、キリストや新興宗教を連想させるような場面もあって、これを日本語に訳した五木寛之さんがあとがきに、「この作品が何を言おうとしているのかわからない」と書いていたのが印象に残っています。

けれども、これは、人間の霊的進化を象徴的に書いたものなのです。物語の中では、テレポーテーションが、霊的進化のシンボルになっています。けれども、私がいまここで書こうとしていることは、霊的進化全般のことではありません。人間がテレポーテーションをするようになったら、社会がどれほど変わるか、ということです。




テレポーテーション(瞬間移動)とは、物語にあるように、一瞬のうちに、別の場所に移動することです。これは、猛烈なスピードで飛ぶのとは違います。なぜならテレポーテーションでは、途中の空間を通らないからです。ただ、ある場所から消えて、別の場所に現れるだけです。途中にどれだけの距離があろうと、障害物があろうと、関係ありません。そこは「通らない」からです。

いま、地球は3次元から5次元に移行したと言われています。人類もそれについて行こうとしています。人類がちゃんと5次元世界に生きるようになれば、テレポーテーションするようになることは確実です。

人間がテレポートするようになると、社会はどのように変わるのでしょうか? 未来の社会を少しイメージしてみましょう。



まず、交通機関がみんななくなることは確かですね。自動車も、自転車も、汽車も電車も飛行機も船も、みんななくなります。

次に、これらに関連する施設がみんななくなります。各家庭から駐車場がなくなります。戸建の家では、少し庭が広くなりますね。街の中の駐車場も要らなくなります。公園が増えるかも知れません。信号機や道路標識もなくなります。路上のコインパーキングもなくなります。自動車がなくなれば、道路はどこでも横断できるようになるので、横断歩道もなくなります。第一、道路を歩く人がいなくなりますね。でも、散歩をする人はいるでしょう。道路は、すべて遊歩道になるのです。遊歩道になってしまえば、セメントによる舗装はない方がいいかも知れません。すべての道路が自然な土の道路に戻るかも知れません。

鉄道や高速道路のように、延々と続く建造物が撤去されます。鉄道や高速道路は、切れ目がないので自然界を分断してしまい、野生の動物たちの生態が変わってしまう、と言われていました。高速道路がなくなれば、野生動物の生態がもとに戻るかも知れません。

鉄道の駅、操車場、空港、滑走路、港湾施設など、大規模な交通運輸の施設がみんななくなります。海岸はいたるところ、海水浴場になるでしょう。空港の跡地は何にしましょうか? 野球場やサッカー場などを集めた運動公園になるのでしょうか?

このような設備関係が変わるだけではありません。人間の生活の仕方が次第に変わってくるでしょう。

テレポーテーションができるようになると、人間が一か所に集まって暮らす必要がなくなります。たとえば、東京都心のオフィスに毎日出勤するとしても、テレポートできるなら、住むのは北海道でも九州でも、あるいは、ハワイでもセブ島でもかまわないのです。地球上、どこに住んでいても、一瞬で、オフィスに出勤できるのですから・・・。

仕事で、出張するのも、特別なことではなくなります。「今日は、東京の本店に出勤する代わりに、ニューヨーク支店に行くよ」というだけのことです。仕事が終われば、ニューヨークから北海道の自宅に帰ります。翌日は東京の本店に出勤します。

旅行という概念がなくなります。世界中どこからでも一瞬で自宅に帰ることができるようになれば、ホテルや旅館が要らなくなります。自宅とは違う気分を味わいたいという人々のために、リゾートホテルは残るかも知れません。けれども、ただ宿泊するだけのビジネスホテルは、確実になくなるでしょう。ホテルは、旅行業ではなく、ディズニーランドやオランダ村のようなエンタテイメント事業になるでしょう。

商店の出店の考え方も変わるでしょう。大規模スーパーやチェーン店は、これまで、どれだけ多くの店を出すかということが、重要な戦略でした。一つの店に、歩いて、あるいは自動車ででも、直接来れる人の範囲が限られていたからです。けれども、テレポートする人々にとっては、距離というものが意味を持ちません。よい店があると聞けば、それが地球の反対側にあったとしても、そこに出かけます。近いから便利ということがなくなります。商店は、みんな、よい店舗を数少なく持つようになるでしょう。空港の跡地などを利用して、最高に充実した美しいショッピングセンターのようなものができるかも知れません。

託児所がないために女性が働くことができないという待機児童の問題も、過疎になった村でお年寄りが買い物ができないという買い物弱者問題もなくなります。テレポーテーションが可能になれば、どんな遠い託児所にでも預けに行くことができるし、お年寄りもポンと飛んで都心のスーパーに買い物に行くことができるからです。

人々の職業にも変化が起こります。交通機関や関連の施設がなくなるということは、そこで働く人も要らなくなるということです。タクシードライバーも飛行機のパイロットも客室アテンダントもなくなります。昨年、トンネルの天井が落下して騒ぎになりましたが、道路や鉄道のメンテナンスの問題もなくなります。自動車や飛行機を作る製造業も要らなくなります。交通機関の燃料に使うための石油産業も不要になります。大規模な失業が起こると心配されるかも知れませんが、5次元の世界では、もともとお金を稼ぐために働くということがないので、心配は要りません。お金のない世界という記事を読んでください。

政治にからんで、もっと深刻な問題が発生する可能性もあります。現在は、人々が移動するのに交通機関を利用しなければならないので、空港や港湾、国境のゲートなどを管理することで、出入国の管理ができました。けれども、人々が、いつでもどこも、勝手にポンポン移動できるようになったら、出入国管理ができなくなります。国境というものが意味をなさなくなってしまうのです。私は、将来、国境という概念はなくなるだろうと思っていますが、政治体制がそこまで追い付いてくるまでは、「国際テレポート禁止令」のようなものが出されるかも知れません。ただし、「密航者」を取り締まる有効な手段があるかどうか、私は知りませんが・・・。




このように見てくると、テレポーテーションができるというただ一つのことで、社会全体に想像もつかないような変化が起こることがわかります。3次元世界というのは、人間が霊的存在として本来持っていた能力を極端に制限した世界です。サッカーという競技が、両腕を使わないというルールによって成り立つように、三次元の物質世界というのは、人間の霊的能力を極端に制限し、各自がその制限に従うことに同意することで成り立っていた実験的世界なのです。

いま、私たちは5次元の世界に戻ろうとしています。それは、これまで合意して来た制限を取り外してゆく、ということです。人間は、テレポーテーションで移動し、テレパシーでコミュニケーションを行い、光を食べて生きるようになるでしょう。その時、私たちの住む世界はどんなものになるのか・・・・時々はそういうことに注意を向けてみるのも、必要ではないでしょうか。5次元世界は、私たちが注意を向けるものが実現してゆく世界なのですから・・・・。



2013年7月13日

 
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